世界を撮るシリーズ1 オーストラリア便~光彩の大陸で撮る地球のポートレイト~
1月19日、オーストラリアの食材の豊かさを体感できるレストラン、64 barrack st.にてオーストラリア便を開催しました。ガイドは、オーストラリアを撮り続けて30年以上のキャリアを持ち、タスマニア州の親善大使でもある、写真家の相原正明さんです。観光では行けないオーストラリア大陸の魅力を写真を通して体験しました。当便は特別に、撮影協力をされました、Panasonic社LUMIXからも協力を得て、4Kディスプレイによるビビッドな色彩でお伝えすることが出来ました。
改めて知るオーストラリア大陸とその歴史
ガイドトークの前座にオーストラリアの基本情報をクルーリサーチで紹介します。広さと人口の少なさ、貿易は中国との関係が強く、鉄鉱石産出量は世界一ということに触れました。今回、1月に開催した理由は、1788年イギリスが領有を宣言した日で建国記念日とされている祝日、1月26日のオーストラリアデイにちなんでいます。教科書には載っていない、オーストラリアの歴史を調べると、明治初期から日本から渡った移民が、真珠採取や稲作技術で貢献していることを知りました。太平洋戦争の悲しい歴史の後には、日本の高度経済成長期を鉄で支えた友好国といえます。そして、日本語の学習率は世界一なのです。
パースから西部・中央部を縦断するアウトバックの旅へ
さて、カンタス航空で成田からメルボルン経由でパースに到着しました。カンタス航空はいつも相原さんの撮影機材を運ぶ、100年間事故のない航空会社です。ここからは、相原さんの写真とともに、海沿いと内陸砂漠地帯を巡ります。
パースの北のPinnaclesは海沿いの砂漠に石柱がゴロゴロしている場所です。パースから車で7時間半ほどかかるところにある、西オーストラリア州の南海岸の真ん中あたりのエスペランスは、相原さんも、住むならここ、という真っ蒼の空と海という最高のビーチがある町。南極からの風で波が立つ瞬間をとらえるため、6日間かけて撮ったとのこと。
そしてさらに東へ向かうと南オーストラリア州との境の町Euclaからは、Nullarbor平原が広がる砂漠です。世界一長い直線道路をバイクで走ります。白い砂の大地に天は深い青。そして、同じ景色をモノクロでみると、敢えて色の情報を取り除いた光と影の力が迫る写真でした。そして足元にある植物には生命力が見える―。
そこから3000kmを北上します。次に向かうはPurnaluluというユネスコ世界遺産登録のバングル・バングルと呼ばれる砂岩地層がむき出した岩石群が広がっている場所。全景をとらえるためドアが無い空撮をしたとか。
これらの場所に撮影をしにいくとはどういうことなのかについてユーモアを交え、語ってくれました。とくに内陸部の砂漠では、食糧、水、ガソリンの枯渇は死に直結します。限られた時間の中で、その時々の光を撮り逃がさず、野宿もします。Purnaluluの奇岩群では星が満天に輝き、相原さんが呼ぶところの、ミリオンスターホテル。この世のものとは思えない自然と一体となって眠りにつけますが、そのまま永遠の眠りにつくこともできる…。目的地を告げて、数日到着しなければ、遺体回収袋を持ってヘリコプターが来る。人が踏み入れない場所に遺る大自然は、地球が生き物であることに畏怖を感じる場所でもあります。
豊かな食材の宝庫。料理で多文化国家を体感
「オーストラリア料理って何?とよく聞かれるのですが、一言で言えるものはありません。各国からの移民が持ち込んだ料理文化に、自然の恵みであるその土地の上質な素材が加わったマルチエスニック料理です。」 シェフ・白井正樹さん
当便の食事提供は64 barrack st.です。オーストラリア料理店はどこも敷居が高くランチタイムの開催に困っていたところ、企画に賛同いただき特別営業をしていただけることになりました。
運営会社は2015年パースの 64 barrack st. に日本食料理店”EDOSEI“を開業しています。そして2017年にできた日本のオーストラリア料理店がここ、64 barrack st.です。オーストラリアの豊富な食材と個性豊かなオーストラリア産のワインが楽しめます。オーストラリアの海と空をイメージした内装がトリップ感を演出してくれました。オーストラリアに在住経験のあるスタッフも多く、オーストラリアとのつながりを感じることができます。
搭乗の時にまずドリンクを注文いただきました。今回メニュー決めの際にクルーが譲れなかったのがワインを含めることでした。オーストラリアには有数のワイン産地があります。グラスで提供のワインはシラーズ(赤)Penguin’s Kissとシャルドネ(白)Heritage Estateでした。ノンアルコールカクテルもオーストラリアをイメージした、オレンジジュースベースのSunset on Cottesloe Beachと、3種のジュースのトニック割Perth Mintから選んでいただきました。
~LunchTrip特別ランチコースメニュー~
–マッシュルームのクリームスープ
–ケールのサラダ(通常青汁に使われますが、サラダで食べられるよう国内で特別栽培されたもの)
–チリマッスル(ムール貝のチリトマト煮。イタリア移民の味。西オーストラリア名物でお店を代表する料理です。複数名分では残るソースで〆のパスタやリゾットにできます)
–サーロインステーキまたはタスマニア産サーモンのグリル(申込時に選びました)、コールスロー、穀物入りご飯、レッドカレー(タイ移民の味)のメインプレート
–デザート(ラズベリーソースのムース)と紅茶
「オーストラリアの食材の豊かさを是非体感ください。中でもタスマニア産は本当に綺麗な自然の賜物です。」
今回の運営においてきめ細かく協力いただきました、宮武マネージャーより、次回来店の際に使えるワイン1杯サービスクーポンを全員にいただきました。
左より: Crew Ami, Yui, Kazue, 白井シェフ, 相原正明さん, 宮武マネージャー, 64 barrack St. スタッフの方々
砂漠を超え、亜熱帯、タスマニアへと続く旅
後半のトークは、Purnaluluから西へブルームという街に寄り道です。ここは明治初期、イルカ漁で有名な和歌山の太地町から、海に潜ることが得意だったので、真珠の採取のために集団移民があった町です。相原さんが感慨深く見せてくれた写真は、日本人のお墓が、日本のほうを向いているというものでした。潜水での作業で命を落とす人も多数いたのです。そして太平洋戦争中には日本軍からの空襲も受けました。日本とオーストラリアのつながりを語るうえでは外せない場所です。
さて、いっきに東のクイーンランド州へ向かいます。グレート・バリア・リーフの町ケアンズの少し北のDaintreeは、熱帯のジャングルです。カメラ撮影には湿度など過酷な条件の環境ですが、鮮やかな緑でパワーが溢れる写真達でした。オーストラリアは鉄鉱石の算出世界一(2017年でシェア52%)ですが水資源には恵まれていません。精錬のための十分な水があり、製鉄工業が発展していたら、世界の歴史は変わっていたかもしれない、との話はオーストラリア大陸のあらゆる場所を見てきた相原さんならではの視点でした。
そして沿岸の都市エリアを南下し、その先にある島が、タスマニア島です。相原さんが魅せられ、最も多く撮影に行く、太古の自然が遺る場所。恐竜の時代から生きるタスマニアでしか生息していない植物、パンダニの写真達は、ここに生きているよ、と語りかけているようでした。南極からの風が吹き、世界一清浄度の高い空。夜には立木の天上に銀河が輝いている。自然にパワーをもらい、撮らせてくれてありがとう、と写真を撮る―。これからも地球のポートレイトを撮る相原さんの旅は続きます。
写真は写心。ワークショップ
今回は、相原さんの撮影を協力されました、Panasonic社LUMIXより、100インチ4Kディスプレイを提供いただきました。LUMIX顧問・房様より、相原さんが撮影されましたカメラ、カメラグランプリ2019金賞を受賞したS1R(フルサイズミラーレス一眼)、Gシリーズ(ミラーレス一眼)の紹介がありました。酷暑の砂漠、多湿大雨の原生林と過酷な環境に耐えたカメラです。相原さんは撮影者としてLUMIXの開発チームに操作性や機能についてフィードバックをされることもあるそうです。また、GF10はスマートフォンよりも綺麗にセルフィーも撮りやすい機能や、望遠やボケ感なども楽しめるオプションもあり、旅の風景やスナップが撮りたくなるカメラです。
LUMIX顧問・房様(右)
パッセンジャーの質問を受けながら、撮影のポイントを教えてくれました。全員の心に残った相原さんからのメッセージは次のことでした。「写真は写心だとおもうのです。写真は真実を写す、と書きますが、撮る人の心を写すものです。例えば料理を撮るとき。美味しそう!と思わないといい写真は撮れない。そして、撮りたいとおもったものを素直に撮ってください。だから、頭で考えてシャッターを押しがちな男性より実は女性のほうが上手なのかもしれませんね。」
シドニーより森林火災レポート
2020年は、オーストラリアで5億匹の動物が焼失したというニュースから始まりました。半年前の企画時に取り上げることは想定していませんでしたが、約半年間火災が止まず、やっと日本でも報道され、この問題に触れずにはいられませんでした。チーフクルーKazue(以下K)の知人で日本企業オーストラリア支社勤務・シドニー在住のシンヤ(以下S)さんにインタビューした内容をレポートしました。(1月7日時点)
K:どんな状況ですか。詳しく教えてください。
S:12月中旬に最初に空が煙だらけになった日は恐怖を感じました。物流にも影響がでて、オフィスで騒いでいました。今回山火事は主にはNew South Wales州とVictoria州で発生しています。シドニーではシティ中心地の上と下で挟むように発生しています。人が亡くなったり家がなくなるなど勿論発生はしてはいますが、人が基本住んでいない地域なので、火事の規模ほどの被害はないのが実態です。われわれも火事自体は居住地近くで発生していないのでそういう意味の危機感はないです。ただ火事のひどい日、暑い日は火事が大きくなりやすく、そういう日で風向きが悪いとシティも空気がかなりひどくなり、昼間でも空と太陽の色がおかしくなっているときがあります。外の空気が吸えないため、12月には小学校が一斉に休みになったこともありました。公共の場の火災報知器も、外の煙を吸ってアラームを連発することもしばしばあり、オフィスでも何度か誤作動して、仕事にならず、退社指示が出たこともありました。
今年はとにかく秋から冬にかけて(4~10月)雨がほとんど降りませんでした。それによるダムの水が不足し、節水が始まっています。そして更に事態を悪くしているのが、その雨が今でも全く降らないので、火が鎮火しないのです。
消火ボランティアも出動していますが、出動がほぼ常時になっているのでもはやボランティアになっておらず、通常の仕事を放って、無給で働いていることになっているのです。ボランティアをもっと増やすにも、消火作業自体が危険な仕事なのでだれもが支援できません。そして機材も限りがあるので、これ以上増やしようがないみたいです。
とにかく雨が降ってくれればいいのですが…。なかなか降らないです。
K:人々はどう感じているのでしょう、なにか劇的に変わったことがありますか?
S:アジアでは焼き畑農業とかもありますし、自然は再生するという理解なのでしょうね。自然の山々が燃えること自体は大問題と思っていなくて、それによって人類や動物への被害が出ることを懸念しています。カンガルーなど足が速い動物は逃げているようですが、コアラは逃げ遅れています。
K:国際社会ができることはなんだと思いますか。
S:難しいですね。人的支援をもらってもキャパの関係で使いこなせないし、決して人への多大な被害が出ているわけではないので、募金は自然を元に戻す活動へ使われるとおもいます。ただその前にまず鎮火なので、鎮火させるにはもうヘリで鎮火材をまくぐらいしか追加でできない。その機材や資材、もしくは費用をサポートするぐらいが現実的なのかもしれません。
ですがやはり、この問題をグローバルでタイムリーに共有して皆がその危機感を共有することがまずは大事かとおもいます。 人の動きなどはグローバル化が加速していますが国際報道はどうでしょうか。
※追情報
①LunchTrip2日前、1月17日~18日にかけてNSWとビクトリア州に待望の雨が降りました。しかし、焼野原になったところは洪水が起こり、雷が集中してまた火事が起きたところもあったそうです。アデレードは変わらず火事が続いていました。
②日本政府の対応としては1月15日に自衛隊輸送機2機を派遣
③「森林火災に恵みの大雨、州内1/3が鎮火」BBC 2/7
私達もアクションを
大陸の自然資産が失われ、心痛むオーストラリアの状況にたいして、私達もこの場でなにかアクション出来たらと考えました。
相原さんはかねてより、ご自身の活動の利益の一部をポートマッコリーにあります、コアラ病院に寄付を続けていらっしゃいます。当日のEarthrait写真集の売上と任意の募金を相原さんに託す形で総額46,900円の寄付をしました(イベントチケット販売総額の30%)。コアラの保護、看護、食糧となるユーカリの植林活動などに充てられます。
ご賛同いただきましたパッセンジャーの皆様、誠にありがとうございました。LunchTripの場をきっかけに社会貢献につながるアクションができたことを大変嬉しくおもいます。
相原正明写真集Earthrait~光彩の大陸 オーストラリア~
パッセンジャーの声
—初めてでしたが、本当に面白かったです。プレゼンテーションを交えてなのでその土地の食事のみを楽しむより、ずっとその土地の距離が縮まり、愛着を感じました。
—相原さんのお話もさることながら、資料もクルーレポートも素晴らしかったです。お料理も充実していて楽しませていただきました。
—また、オーストラリアへ、行きたくなりました。森林火災の深刻さが、生で聞けました。
—色々な国のことをこのように知りたいです。教科書には無い話が聞けてとてもよかった。是非続けてください。
相原さんのトークは面白く、オーストラリアの魅力を再発見出来たとの声多数いただき、実際に行ってみよう、という方も続出です。レストランと相原さんの撮影ストーリーとLUMIXの素晴らしいコラボレーションにより、オーストラリア愛に溢れた回となりました。皆様、誠にありがとうございました。
チーフクルー Kazue