ミャンマー便 featuring 映画「僕の帰る場所」レポート

ミャンマーの民主化クーデターが起こったのは2021年2月1日。今なお民主化を求める市民に対し、国軍による徹底した弾圧が続いています。抵抗する市民や少数民族の武装組織との衝突も全土に広がっています。今回は、その2月を忘れないため、2022年2月20日映画『僕の帰る場所』の藤元明緒監督に「ミャンマーと私」をテーマにスペシャル対談をしていただきました。2021年7月のベトナム便Light featuring 映画『海辺の彼女たち』に続き、日本とアジアシリーズです。

映画『僕の帰る場所』は日本に住むミャンマー人家族の物語です。難民申請が通らない父と離れて、母と息子たちはミャンマーに帰ります。日本で生まれ育った主人公カウン君の帰る場所とは――。2018年に劇場公開されました、藤元監督の長編デビュー作は、第30回東京国際映画祭のアジアの未来部門でグランプリを含む2冠を獲得し、世界各国で上映されました。


~上映案内~
2022年4月16日(土)~22日(金)

映画を観て、ミャンマ―を知る Vol.2

春のミャンマー新年企画として、『僕の帰る場所』と新作短編『白骨街道』が、全国18館の劇場で同時上映されます。

ミャンマー料理を食べる体験から生まれた映画

藤元監督がミャンマーとかかわるようになったのは、2013年に、ミャンマーを撮る企画に参画したことがきっかけでした。そして、高田馬場でミャンマー料理を食べながら、在日ミャンマー人の方とつながるようになり、難民申請中のある料理人の体験から着想して『僕の帰る場所』が生まれました。物語前半は日本が舞台で、難民認定を求める、父・母のストーリー。後半はミャンマーが舞台で、長男のストーリー。それぞれが所在を求め、未来が不透明な中で迷っている、家族の群像劇です。

2014年当時のミャンマーでの撮影エピソードも語っていただきました。毎日情報局の担当者の立ち合いがあり、検閲がありました。ミャンマーでの上映も視野に入れていたため、許される表現を自己検閲したり、それでもどうしても外せないシーンにはチャレンジをしたりと特別な経験だったといいます。現在、ミャンマーでは詩人、アーティスト、著名人の多くが拘束されています。表現活動の自由を奪われているのです。

ミャンマーにいる家族・知人を心配する一年

ミャンマーに家族がいる藤元監督の一年をお聞きしました。2017年、ラカイン州でロヒンギャに対する武力弾圧が起こるなど、国内の情勢は不安定ではあったものの、これまでの民主化弾圧の歴史を繰り返すクーデターとなるとは想像しなかった。親族や現地の映画関係者が次々拘束され、現地の情報に触れることすらできなくなるほどでした。離れた日本にいるもどかしさもありながら、在日ミャンマー人が毎日声を上げ続けている姿に、その活動を支えなければ、との気持ちになった―。

「今も現地にいる親戚や友人が危険に晒されています。僕にはミャンマーの政治を変えられる力もないし、日々殺されていく市民の盾になれるわけでもありません。それでも、日本人である僕らには、今も日常を取り戻そうと闘っているミャンマーの人々の背中を押す事はできると信じています。」(チャリティー上映2021に寄せてのメッセージより)

ミャンマー料理を食べよう

ミャンマーの代表的料理で、最も多く食べられている麺が、モヒンガーです。米粉から作ったそうめんのような細麺に、魚をベースにした汁をかけた麺料理です。朝の定番メニューでもあり、屋台でも食べられるソウルフードです。

コロナ禍で料理店が苦境にあるので、料理コーナーは特に重要だ、と、都内のミャンマー料理店おすすめベスト3を紹介してくれました。

俺の家(三田):日本人にも食べやすい味付けで初めての人におすすめ。

ヤマニャ(高田馬場):ミャンマー人にも人気のモン族料理。辛い。

ノングインレイ(高田馬場):シャン族の定番料理が食べられる。豆腐カウスェはおすすめ。2017年3月に開催したLunchTripミャンマー品川便では店主のスティップさんにガイドしていただきました。

クーデターに対抗する市民的不服従運動により、現地では収入を奪われている人が多くいます。その支援のために、日本にいるミャンマー人の有志の方が共同開業した、Spring Revolution(西池袋)は、飲食代の収益のすべてをミャンマーへの支援に募金しているお店です(関連記事)。

「食を起点に地域を見ると、ミャンマーにはそれぞれの地方に魅力があり、文化が残っているので、ぜひ触れてみてください。今回のようなクーデターが起こると、経済的な何かで測れない、文化的な死が訪れます。もちろん情勢を知ることも大切ですが、ミャンマーが本来持っている魅力を僕らが忘れてしまうと、権力の思う壺です。だからミャンマー料理を食べることは、一番身近なミャンマーへのタッチポイントだとおもいます。コロナ禍が終わったら、ミャンマー料理店に行ってカラオケでミャンマーの人と歌ってください。」

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藤元監督との対談以外も、ミャンマーの歴史、リトルヤンゴン(主に高田馬場の一大ミャンマー人コミュニティー)の歴史、最近の情勢も調べたことを紹介しました。アフタートークでは知られざる首都・ネピドーの話が盛り上がりました。また、支援チケットの売り上げ1万円で藤元監督を通じてミャンマー支援のための寄付ができました。視聴くださいました皆様、誠にありがとうございました。


藤元監督が、第3回大島渚賞、第31回日本映画批評家大賞・新人監督賞を受賞したことを祝し、5/8まで録画視聴版アンコールを無料で配信します。

【録画視聴アンコール】LunchTripミャンマー便 featuring 映画「僕の帰る場所」 Peatixチケットサイト(要登録・無料)

是非お楽しみください。