4/24 シリア便Light レポート

過去開催便のガイドに再びお話を聞く、気軽に無料でオンラインで楽しめるライト便第二弾の行先はシリアです。

2018年3月のシリア便では、「過去といまのシリアをつなぐ」と題し、アラビア料理レストラン「ゼノビア」 で開催しました。ガイドの山崎やよいさんが体験した、紛争前のシリアの人々の暮らしや風景についてのお話と、泥沼のシリア紛争の中、生活基盤のほぼ全てを失った女性たちに「針と糸」で収入の道を開くプロジェクト、「イブラ・ワ・ハイト」の活動についてお聞きしました。

それから3年。アラブの春から10年の節目を迎えた今も、まだシリアの民主化はかなわず、国内外へ避難した国民の多くは安心して故郷に帰れない状況が続いています。「イブラ・ワ・ハイト」の刺繍を編む女性たちはどうしているでしょうか。シリアが平和になるには何が解決されないといけないのでしょうか。その後のシリア、これからのシリアについて、シリア便クルーを務めたKazueがインタビューしました。

空爆のニュースがなくなったとしても

ラマダンを共に過ごすことで、遠く離れていてもコミュニティーにいる気持ちになれるという山崎さん。内戦は終わったかのように報道は少なくなったものの、2019年冬から2020年3月にかけて大きな空爆があり、多くの避難民が出ました。民主派(反体制側)の拠点であるイドリブ県では散発的な空爆は続いていて、トルコ国境近くでは避難のテント地区がある。背の低いオリーブの木の下で座すだけ。今年の冬は雨でせっかくのテントも浸かる…。そんな光景を現地の友人からも聞いたそうです。

「体制側に制圧された首都ダマスカスでもパンが買えない、電気・ガスなどのインフラが整わないという状況です。目に見える爆撃がなくなったことが終わりではありません。内政での闘争を超えて外国の介入を許してしまったため、解決の糸口が絡まったままなのです。」

針と糸で創り続ける女性たち

シリアからの難民が多く住むトルコのリーハニーエへ2019年11月に訪問したときの様子を伝えてくれました。イブラ・ワ・ハイトには工房はありません。一人一人が作っています。2013年の初期からずっと続けているサラームさんはどんどん技術を磨いています。リーダーのウム・ムハンマドさんはパルミラ出身で、故郷の風景をモチーフとしたデザインを編むことに喜びを感じています。経理のマイヤーダさんは訪問のたび精一杯のおもてなしをしてくれます。シリア国内、ホムスで教育支援をしている人とも一緒に活動をしています。

「みんなそれぞれ大変な状況にありながらも、誰一人後ろを向かない。その姿に、こちらが助けられていると感じます。だから支援団体ではないのです。」

トルコで過ごすパンデミックは

シリア含め周辺避難国(トルコ、ヨルダン、エジプト)と日本の感染状況とワクチンの接種率を調べました(4月22日現在)。トルコのワクチン接種率は世界のトップ10に入っていました。トルコではシリア難民にもワクチン接種はもちろん、ロックダウン中の食糧支援もあったそうです。彼女たちは「コロナは大変かもしれないが、出来る限りのことをすれば収まる。私たちは出来る限りのことをしても収まらないことを経験をしているのだから、問題はそこにはない。」と達観し、たくましくパンデミックを過ごしているそうです。

シリアが自由と尊厳を勝ち取る日まで

「日本で空気のように思えている自由と尊厳が、シリアでは40年近く制限されていて、体制批判を口にすれば尋問や拘束に遭うことが起こっていました。2011年に革命を起こしたけれども、さらに弾圧がエスカレートしているのが現実です。」山崎さんは、シリア危機を専門とする日本のNPO法人Stand with Syria Japan (SSJ) で監事もされています。サイドナヤ刑務所で起こっている計画的・組織的な殺戮のこと、知人の家族に降りかかった容疑の例などを語ってくれました。SSJはまたジャーナリストの保護もしており、人道危機の実態を伝える活動をしています。LunchTripからも寄付金付きチケットの販売は全額SSJへ寄付することにしました。

今後シリアはどうなっていくのか。3月にドイツで、シリアでの人道犯罪に有罪判決が下りました。希望の兆しと思いたいニュースですが、まだまだ体制側の大物の裁きは難しいようです。「人権を踏みにじっている現状について、正しくない、と声を上げること、注視していくことが大切です。シリアは一つの例であり人権侵害は他の国でも起こっているのですから。」

「戦闘がなくなることが終わりではありません。本来の目的である、自由と尊厳を求めることには終わりはないのです。運動をするためにもまず戦闘がない状態にしなくてはならないのですが、その終わりのカードは悲しいことにシリア人にはない。ロシア、アメリカ、イランの利害交渉のカードにされていることを心配しています。次の世代が背負っていかなくてはならない長い道のりかもしれません。考古学者として、歴史から考えてみると、ローマとペルシャの大国のちょうど境目にシリアがあったことが思い出されます。歴史は螺旋です。繰り返しているようでも、上へと、より良いものに到達していっているはずです。私たちはその勢いの中に入っていくべきだと思います。そしていつか、自由になったシリアに私も帰りたいし、皆さんにもトリップしていただきたいです。」

平和・平等・人権を考える

LunchTripのガイドは平和・平等・人権に向き合い活動をされている人が多くいます。コスタリカ便(2019年5月開催)は平和国家について考える回でした。クルド便(2020年11月オンライン開催)は日本の難民との共生について考える回で、入管の問題を知りました。最後にそれぞれお二人のガイドが主催するイベントを紹介しました。そしてシリアの空爆のがれきから市民を救助するホワイトヘルメットを描いたドキュメンタリー映画「アレッポ最後の男たち」(2019年劇場公開)の映像を見ながら本編は終了しました。

アフタートークでは、用意していたのにすっかり忘れていた話題、報道の自由度が低い日本のメディアにおもうこと、そしてなんといってもイブラ・ワ・ハイトの作品の紹介の時間でした。参加者の中には、日本の入管問題について行動している方がいて、山崎さんもアラビア語の通訳の仕事を通して聞いた声もあり、日本で難民や外国籍の人と共生していくために壁になっていることについて話し合いました。外国籍の子供たちの日本語学習支援に携わった経験があるKyokoからも現状を知ることができました。

シリアが第二の故郷である山崎さんのお話は一言一言に重みがありました。オンラインイベントとなり、録画をしてありますので、より多くの方に視聴していただけたらと思います。一同に会してお料理を食べるLunchTripはいまは出来なくなっていますが、心に残ってその国やテーマのことを続けて知っていく一助となる回を今後も企画したいと思います。

無料録画視聴チケットはこちらのPeatixサイトよりお申込みください。

http://ptix.at/FSilQx

5月末まで視聴できます。

期間中寄付金付チケット購入分と合わせてSSJに寄付いたします。心を寄せていただきました皆様、ありがとうございます。